昨年8月から1年間で46人に上った、帝京大病院の多剤耐性アシネトバクター菌の集団感染者数は、国内で1年間に報告される数の1・3~1・4倍に達することが、8日までの厚生労働省の調査で分かった。
同省の調査では、この耐性菌が病院内で検出されたケースは2008年は35人、09年は32人だった。藤田保健衛生大病院の集団感染24人(10年2月以降)も年間報告数の約7割と大規模で、院内感染対策が国内での感染拡大防止には重要といえる。
同省は07年半ばに、医療機関から多剤耐性アシネトバクターの検出について報告してもらう院内感染対策サーベイランス事業を開始。08年調査では、全国約500の医療機関で患者1万4558人からアシネトバクターが検出され、35人の菌は耐性菌だった。09年は約600の医療機関で、1万6929人のうち32人から耐性菌が検出された。2010/09/08 10:33 【共同通信】
帝京大病院(東京都板橋区)は8日、大半の抗生剤が効かない多剤耐性の細菌アシネトバクターへの感染者が、これまで発表していた46人ではなく53人だったことを明らかにした。追加された7人のうち4人は死亡しており、感染との関係は明らかになっていない。これまで因果関係が否定できない死者は9人だった。この結果を受け、原則としてすべての救急車の受け入れと、すべての新規の入院患者の受け入れの自粛を同日から始めた。入院中の患者全員についても感染していないか細菌の有無を検査するという。
カルテを再確認したところ、まず昨年について2人の感染者の集計漏れが見つかった。改めて昨年1月にさかのぼって調べ直したところ、新たな感染者がさらに5人見つかり、合計7人増えた。亡くなった4人は62~81歳の男女。
病院は当初、最初の感染者は昨年8月、感染と死亡の因果関係が否定できない死亡者は昨年10月にいたと説明していた。
病院は、過去の検査結果について、新たにコンピューターのシステム会社の協力を求めて改めて調べる。
今後、全入院患者の細菌検査をすることにより、さらに感染者が増える可能性がある。
病院は、緊急に診なければならない場合には救急車や入院患者を受け入れるとしているものの、原則として救急車や新規入院患者の受け入れの自粛を始めたことにより、地域の医療への影響が懸念される。病院のベッド数は1154床にのぼる。
同病院は、最後のとりでとされる三次救急の指定も受けており、もともと救急医療に力を入れていた。重症の救急患者を診る救命救急センターに加え、中等度から軽症の患者も受け入れてきた。救命救急センターでは年1200人の重症患者を受け入れている。このほか中等度から軽症の患者は年のべ9千台の救急車による搬送を受け入れてきた。
新病棟に移った昨年5月からは、軽症者を含めて救急患者を一元的に受け入れるER(救急室)を開設した。
同病院では今年6月から8月にかけ、別の多剤耐性の細菌、緑膿菌(りょくのうきん)の感染者も3人出て、うち1人が死亡している。
病院の対応をめぐっては、集団感染を幹部が把握してから、保健所などに報告するまでに3カ月以上かかったことや、患者や家族への説明など、すべて後手に回った点が批判されている。今になって全入院患者の細菌検査をする点についても、改めて対応の遅さが批判されそうだ。
厚生労働省と東京都は今月6日、多剤耐性アシネトバクターの集団感染を受け、同病院に立ち入り検査を実施し、3時間にわたり院内感染対策の態勢や感染拡大の経緯などについて事情を聴いた。
厚労省は国立感染症研究所の専門家を帝京大病院に派遣するとともに、多剤耐性アシネトバクターの発生状況について全国調査に乗り出す方針を決めた。
46人が53人に増えると、帝京大の耐性菌感染は年間報告の1.5~1.6倍ということになる。
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