コレステロールを考える:/下 男女の治療、一律にせず
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リンク: コレステロールを考える:/下 男女の治療、一律にせず - 毎日jp(毎日新聞). 2010年12月17日
◇頚動脈の肥厚を考慮 善玉・悪玉の比率にも着目
佐賀県武雄市の「ニコークリニック」を受診した女性(60)は、悪玉のLDLコレステロールが212(1デシリットル当たり212ミリグラム)と高かった。日本動脈硬化学会の診断基準では、LDLが140以上の人は「脂質代謝異常」とされ、医療現場でもコレステロールを下げる薬が処方される例が少なくない。
しかし、同クリニックの田中裕幸院長は「閉経後の女性は一般にLDL値が上がる。140を超えたからといって、すぐに薬を出すことはしない」。この女性は他に異常はなく、魚をよく食べ、運動もしていたため、特に治療はしなかったという。
田中院長は薬を処方しない理由として、「一般的に女性はLDLが200程度まで上がっても、心筋梗塞(こうそく)の発症率が増えないという臨床研究報告が多い」ことを挙げる。
同学会がまとめた「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(07年)でも、「女性における冠動脈疾患の発生率は低く、女性の高LDLコレステロール血症は男性以上に他の危険因子の存在を考慮して管理することが必要」としている。「他の危険因子」とは高血圧や糖尿病、喫煙などで、併せ持つ人ほどリスクは高まる。
田中院長は、コレステロール降下薬を処方するかを判断する際、頸(けい)動脈の「肥厚」(IMT=内膜中膜複合体厚)を調べるという。肥厚は超音波エコー検査で確認できる。頸動脈は動脈硬化を検査しやすい血管で、体全体の状況も反映するとされる。厚みが大きく、血管が狭くなっていれば、動脈硬化が進行している表れだ。
田中院長は今年4月までに、患者の男女114人(45~69歳)を対象に、LDLの数値と頸動脈の肥厚を調べた。男性ではLDLが高いと肥厚も厚かったが、女性では相関が見られなかった。むしろ肥厚と関係していたのは、脂肪酸の一種のアラキドン酸だったという。「性差を考慮した治療が重要」と、田中院長は強調する。
個々の数値ではなく、LDLとHDLの比率が重要だとする見方もある。三井記念病院総合健診センター(東京都千代田区)の山門實所長は、内外の人間ドック健診データの分析に基づき、「HDLに対するLDLの割合(LH比)が2・5倍以上だと、頸動脈の肥厚が厚くなる傾向がある」と指摘する。
悪玉のLDLが正常値でも、善玉のHDLが極端に低ければ、動脈硬化症のリスクが高まることになる。
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先月下旬、「血清コレステロールの管理基準を巡って」と題された公開討論会が、東京大で開かれた。日本脂質栄養学会が「コレステロールが高い方が長生きする」とする独自のガイドラインを発表したのを受け、NPO法人「臨床研究適正評価教育機構」が主催した。
医療関係者3人が講演した後に討議し、会場から意見も募ったが、脂質栄養学会のガイドラインへの批判の声が多かった。北野病院(大阪市北区)の越山裕行・糖尿病内分泌センター長は「コレステロールを下げることは有害という考えは明らかに間違いだ」などと語気を強めた。
一方、同NPOの桑島巌理事長(東京都健康長寿医療センター副院長)は「高コレステロール血症が動脈硬化を促す危険因子なのは多くの疫学調査で明らかであり、コレステロールの高い方が長生きと結論づけるのは危険」としながらも、次のように述べた。「脂質代謝異常の基準を男女一律にLDL140以上とすると、不要な治療を促す要因になりかねない。女性の更年期以前と以降の基準値も示す必要がある」
日本脂質栄養学会は近く、反論の声明を出した日本動脈硬化学会に、質問書を出す予定だ。批判が多い今回のガイドラインだが、コレステロール論議に一石を投じたのも事実。生活習慣病の治療・予防にかかわり、多くの人が関心を寄せるコレステロールだけに、今後も徹底した前向きな論議が期待される。【小島正美】
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