カプセル内視鏡 カメラを内蔵したカプセルをのみ込むだけ
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◇苦痛なく体内撮影 ミサイル技術転用、8~12時間分の画像解析
胃や腸など消化器の中の異常を直接カメラで見て診断する内視鏡検査。小さな病変を探し出せる信頼性の高い検査だが、カメラ付きの長い管を口や肛門(こうもん)から入れなければいけないのが苦痛だ。その問題を解消する新しい機器「カプセル内視鏡」の普及が進んでいる。患者の体への負担はほぼゼロ、さらに従来は発見が難しかった病気を見つけられる利点もある。
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「簡単にのみ込めるカプセル型のカメラがあるといいね」。カプセル内視鏡のアイデアは81年、イスラエルのガブリエル・イダン博士が、知人の医師から聞いたこんな言葉から生まれた。イダン博士はミサイル開発技術者。その技術を転用して、97年にはカプセル内視鏡の原形ができた。翌年、イスラエルに「ギブン・イメージング社」が設立され、01年には米国、欧州で医療機器として認可された。
日本では大きく遅れて07年10月、同社の小腸用カプセル内視鏡が「原因不明の消化管出血症例」に対して保険適用となった。今年2月には一度に撮影できる面積が2倍以上広くなり、画質も向上した同社の最新モデルが発売された。海外では大腸用、食道用のカプセル内視鏡も開発されている。
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国立がん研究センター中央病院(東京都)の角川康夫医師(消化管内視鏡科)は月4、5件の小腸用カプセル内視鏡検査を行っている。
患者は検査前日の夕食後から絶食し、当日は午前8時半に検査スタート。胃と小腸に付着した粘液を取り除く薬を飲んだ後、みぞおちから太もものつけね周辺にかけての8カ所に小さなセンサーを張る。センサーは箱形のデータレコーダー(重さ約500グラム)につながっている。次に直径11ミリ、長さ26ミリのカプセルをのむ。レコーダーは腰に巻き、その後は外来患者なら帰宅も出勤も自由。2時間後からは水が飲め、4時間後からは食事もOKだ。
カプセル内視鏡は、最新モデルなら1秒間に2回ずつ発光ダイオードで腸内を照らしつつ撮影、センサーを通じて画像をレコーダーに送る。翌日、患者はレコーダーを持って病院に。カプセルは使い捨てだ。
病院では角川医師がレコーダーから8~12時間分の画像を取り出し、「読影」をする。専門医の目は、5万~8万枚もの画像から小さながんやわずかな出血など病気の兆候を見つけ出す。「日本の『読影』技術は世界でもトップレベルでしょう」と角川医師は話す。
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長さ6~7メートルの小腸は、従来の内視鏡では全体を見ることができず人体の「暗黒大陸」とも呼ばれていた。カプセル内視鏡はその闇を照らす光ともいえる。
角川医師は最先端医療にもカプセル内視鏡を組み合わせて成果を上げている。白血病など血液がんの患者に行う「造血幹細胞移植」では、移植後に小腸に炎症が起きることがある。移植した細胞が患者の体を攻撃する反応が原因の場合と、ウイルスの感染症による場合があるが、双方の治療方法は正反対だ。そこでカプセル内視鏡で炎症部分を撮影。「原因の違いで炎症の見た目が違う。カプセル内視鏡のおかげで確実な診断が可能になった」と言う。
一方、同病院では昨年度、日本で未承認の大腸用カプセル内視鏡の臨床研究も行った。角川医師は「肛門から管を入れる大腸内視鏡への抵抗感は、大腸がん検診の受診率が伸びない理由の一つ。痛み、恥ずかしさのないカプセル内視鏡はがん検診にもうってつけでしょう」と話している。【奥野敦史】
◇費用約3万円、全国200カ所で
カプセル内視鏡検査にかかる費用は、カプセル代金と検査料で約3万円(自己負担3割の場合)。検査を受けられる病院は約200カ所あり、「飲むだけドットコム」(http://www.nomudake.com/)で調べることができる。
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