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2009年2月 2日 (月)

木簡にインフルエンザ治療法

ふじみ野市 マサキ薬局 の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。

2月1日読売新聞朝刊・くらし教育面のコラム「立体考差」が表題のテーマです。

漢方医学の性格の一面を正しく捉えて紹介されていると思います。

ネット上ではこのコラムは掲載されないようなので全文引用します。

編集委員 小出重幸

インフルエンザの特効薬として登場した抗ウイルス剤「タミフル」が効かない耐性ウイルスが今冬、日本をはじめ世界各地に蔓延、医療関係者をあわてさせている。
国立感染症研究所によると、耐性ウイルスが出現した「Aソ連型」は今冬の国内患者の過半数(53%)を占め、ウイルスの大半(99%)が耐性を持っていることが確認されたからだ。
野鳥など野生生物にも広く分布するインフルエンザと、人類はどのように付き合ってきたのかー。

中国では古くから「傷寒」と呼ばれてきた。
もちろんウイルスが見つかっていたわけではないが、「発熱、悪寒、関節痛、全身倦怠感などの激しい感染症を傷寒と名づけ、現代の病名では、インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)などがこれに当たる」と、真柳誠・茨城大学教授(中国科学史)は語る。
驚いたことに、ゴビ砂漠やシルクロードの遺跡から発掘される漢代の「木簡」には、病気の特徴的な症状や治療薬がしっかり記録され、「トリカブト、細辛、桂皮、生姜などを煎じて飲むと、発汗して回復へ向かうー」などとある。

三浦於莵・東邦大学医学部教授は、現代のインフルエンザでもこの治療法が十分通用すると語る。
「現在も使われている麻黄附子細辛湯や葛根湯などとほとんど同じ処方。
かかったかなと感じた発病初期にすぐ飲んで、体を温めれば、抗ウイルス剤に劣らない治療効果があるのです」

原因となる病原体を突き止め、直接攻撃する治療法で西洋医学は発展した。
一方漢方医学は体の抵抗力を支えることを主眼に治療体系を作ってきた。
感染症対策の専門家、国立衛生研究所の、岡部信彦・感染症情報センター長は、インフルエンザに対処するためには両方の治療手段が不可欠だと説く。

「タミフルに代わる新しい抗ウイルス剤やワクチン開発も進んでいるが、インフルエンザには複数の治療手段が必要だ。
若い元気な世代にまでタミフルを処方するような治療法は日本だけで、適切ではない。
漢方医学の治療手段も活用して欲しい」

明治初期以降、医師教育からはずれていた漢方医学が、大学医学部のカリキュラムに復活したのは2001年。
現在は、全国に80ある医学部のうち69で必修となり、漢方薬の基本を学んだ医師たちが、臨床現場に赴任してきている。

「葛根湯を飲めば汗をかく、これは免疫物質が体内でつくられ始めたサインだというようなことは、最近の研究でようやく判明したのです」(三浦教授)

漢方医学の中核には、自然の回復力を健康の礎にしようとする養生思想がある。
歴史の淘汰から生き残った伝統医学の知恵を、私たちも身近に取り戻したいと思う。

漢方では病気の原因のうち人体の外にあるものを「邪」という概念でとらえています。
邪は、寒邪(かんじゃ)・風邪(ふうじゃ)・暑邪・湿邪・燥邪・火邪の六つあるとし、六淫とよばれます。
当然そのいくつかが複合するケースもあるわけです。

現代でいう病原体は邪ということができます。
寒邪に傷(やぶ)れた病気が、上にある、「傷寒」なのですが、インフルエンザや感冒は傷寒だけでなく、寒以外の邪におかされた場合も含んでいると考えられます。
かぜは風邪と書きますね。
ちなみに風邪に中(あた)ってかかった病は、中風(ちゅうふう)という病名になります。

人体の生理を漢方的(人間工学的)に細かく把握した上で、病邪に対してはきめ細かく対応する方法論を確立しているのが漢方のすばらしさです。

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