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2009年2月の24件の投稿

2009年2月28日 (土)

深谷ネギで風邪予防

ふじみ野市 マサキ薬局 の 漢方なブログです。漢方・健康情報を主体に書いて行きます。

風邪の民間療法がサルに応用されていました。

asahi.com(朝日新聞社):【埼玉】深谷ネギで風邪予防 - 食と料理.

 深谷ネギを食べてサルの風邪予防にして――。深谷市は27日、長瀞町の宝登山小動物公園に深谷ネギ5キロを贈った。雪が舞う中、ニホンザル50匹がさっそくネギを食べた。

 深谷ネギの消費PRにつなげたいと、同市の藤沢ねぎ掘取機組合がネギを提供した。

 園によると、冬になると、せきやくしゃみをするサルがいるといい、同組合は今後、効果などをみて、次の冬は12月と1月にも提供したいと話している。

 宝登山小動物公園の新井久彦園長は「風邪の予防になってくれれば。動物園の知名度が上がるとうれしい」。

 ネギの効果については、多摩動物公園(東京都日野市)で04年冬からチンパンジーに長ネギを与えている。同園では「ネギを与えてから抗生物質を与える必要のある風邪は減った」という。

ネギの食味・食性は、辛温で、経絡の肺経と胃経に入る(作用する)とされています。

手足や身体の冷えを除いて温め、発汗を促すとともに体の抵抗力を高める働きがあります。

風邪の民間療法では、刻んだネギに熱いお湯をそそぎ、ショウガのしぼり汁をくわえたネギ湯や、味噌を加えてスープにしたりして飲みます。

長ネギを少し焼いてからのどに巻いてシップすることもあります。

馬鹿にできない効果を発揮します。

サルなど動物に、辛くて温まる食べ物をやるときは注意が必要です。
辛温剤を使うと、皮膚が温かくなります。
そのため風邪を防ぐ効果があるのです。
しかし、毛が生えていて、人間のように汗腺が多くないけもの達には、皮膚が熱くなっても汗で皮膚の熱さを冷ますことができません。
そのため熱がこもり、悪くすると皮膚に炎症を起こしてしまいます。
冬の寒い時期はよいのですが、温かくなってくると危険です。
そのことを知っているので、ふつう獣は辛いものを食べたがらないはずです。

以前、漢方薬の副作用をさかんに警告していた医学者がいました。
「発汗剤の葛根湯を、動物(ラットだった?)に飲ませたら皮膚炎を起こした。だから人にも副作用を起こす危険がある」という論だったと記憶しています。
しかし、これは副作用でもなんでもなくて、薬の作用と動物の体質を考えれば、当たり前のことなので、人と獣の違いを考慮しない間違った論説だったのです。
今でもこれが解らない先生方がいらっしゃるように思います。

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2009年2月27日 (金)

男性更年期障害

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更年期障害といえば女性専門とされてきたと思いますが、最近は男性にも更年期障害はあるとされ、メディアにも取り上げられるようになりました。

男性更年期障害 ストレス社会…大丈夫!?(産経新聞) - Yahoo!ニュース.

■関心高まるも、まだ低い認知度

経済不安が深刻化する中、サラリーマンの中高年男性を中心に、男性更年期障害への関心が高まってきた。女性とは違い、閉経のない男性にとっては見過ごしがちな問題。ただ、その存在はまだよく知られていない。ストレス過多の時代に、男性はどう向き合えばいいのか。(谷内誠)

◆ホルモンバランス崩れ

 男性更年期障害の主な原因は、ホルモンバランスが崩れたり、ストレスが増大したりするためとされる。症状は、精神的には鬱(うつ)状態が進んだり、身体的には疲労や不眠、肩こり、さらにはほてりやのぼせ、発汗といった症状が出たりすることもある。

 中部地方に住むRieさん=ハンドルネーム=(38)は、数年前から更年期障害に悩む夫(52)の治療の様子を、ブログ「男性更年期障害を知ろう!」(pblog.denmame.net)で平成18年10月から記録している。

 「一般の認知度が低く、治療にあたる医師の中には、存在を否定する人までいる。妻も、不調を訴える夫に『だらしがない』『やる気がない』と思っている人が多い。私のように、夫を支える人間がいるということを知ってほしい」

 Rieさんは、地元に納得できる医師が見つからず、夫とともに県外の病院に定期的に通う。「サプリメントや精神科の治療なども試してきたが、今は男性ホルモンの投与が中心。ただ、投与し過ぎると前立腺がんの心配も出てくる。症状とうまく付き合っていく本人を支えたい」と話す。

 ◆やる気の減退

 「英国の研究で、男性ホルモン(数値)の高い証券マンが、低い人より利益率を上げているとの報告があります」。こう話すのは城西クリニック(東京都新宿区)にある日本臨床男性医学研究所の熊本悦明所長(札幌医科大学名誉教授)。

 熊本所長は「男性は女性に比べストレスに弱く、その影響を男性ホルモンが受けやすい。金融不安でストレスを受けやすい状況ではなおさら」と警鐘を鳴らす。

 男性ホルモンの分泌が抑制されると、仕事などのやる気が衰え、不眠、性欲の減退やED(勃起(ぼっき)障害)にもつながる。熊本所長は治療の大切さを訴え、「性交の有無に関係なく、男性更年期障害の治療で自信を取り戻し、『会議で大きな声が出せるようになった』といった人は多い」と説明する。

 しかし、熊本所長は「ホルモンの数値を計ったり、睾丸(こうがん)の大きさを測るなどして、しっかりと症状を聞かないといけないのに、簡単な問診でED治療薬を処方する医師がいるのは問題」と一部の医師側の姿勢に疑問も投げかける。

■男性更年期障害チェックリスト

(1)性欲の低下を感じる

(2)元気がなくなってきた

(3)体力、持続力の低下を感じる

(4)身長が低くなった

(5)日々の楽しみが少なくなった

(6)もの悲しい、怒りっぽい気分がある

(7)勃起力が弱くなった

(8)運動する能力の低下を感じる

(9)夕食後にうたた寝をすることがある

(10)仕事の能力が低下したと感じる

※「はい」が3つ以上、(1)(7)どちらかが「はい」だと男性更年期障害の可能性が高い。

 (伊藤直樹・NTT東日本札幌病院医師のリストを元に作成)

中高年期になり、精神的には鬱(うつ)状態が進んだり、身体的には疲労や不眠、肩こり、さらにはほてりやのぼせ、発汗といった症状が出、男性ホルモン分泌が失調している場合に診断されるということです。

西洋医学的には、不足してくる男性ホルモンの補充が治療の中心のようです。

実は、この症状は漢方の得意分野です。
漢方にはとてもきめ細やかな対応策が整備されています。

老化による衰えは、労とか虚勞という概念でとらえることができます。
労は疲労の労です。

漢方では五つの臓器についてみていきます。
肝・心・脾・肺・腎のどの臓が疲労しているか、虚しているかをみて、そこを天然自然のもので補うという対応をとります。
もし実しているものがあれば、それは瀉します。

上の10項目をみると、加齢によって出てくる、腎虚・腎労と心の虚・労のウエイトが大きいといえます。

あとは、五臓のバランスとひとの構成要素である気・血・水のバランスが重要です。
くずれを補正する処方で対応します。

高齢者の臓腑の機能が減衰してくるのは自然の摂理であり、青年と同じように活動ができることなどありえません。

五臓が歳相応に、バランスよく衰えてくるのなら、レベルは低くとも生活・活動に支障を来たしません。

漢方的な生理学、病理学に基づいて、衰えた臓腑を立て直して、バランスをとりもどして、歪を是正して更年期障害の症状を霧散させようというわけです。

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2009年2月26日 (木)

免疫効かないHIVが増加

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免疫効かないHIVが増加 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

ワクチン開発見直しも

 遺伝子変異で人間の免疫が効きにくいエイズウイルス(HIV)が広がっていることが、熊本大などの国際チームによる8か国2000人の感染者調査で確認された。ワクチン開発戦略の見直しを迫る内容。26日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

 HIVが体内に入ると、細胞内で増殖を繰り返し、エイズが発症する。体内の免疫細胞は、感染した細胞内で、ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる特殊なたんぱく質と結合したHIVを攻撃するが、ウイルス内のある遺伝子に変異が生じると、免疫細胞が攻撃できなくなる。

 研究チームはまず、特定のHLAが先天的にある感染者に注目。その細胞内の変異ウイルスを調べたところ、全体の96%から検出された。変異ウイルスがなぜ発生したかは不明だが、HLAのない感染者の29%からも検出された。HLAがある感染者の体内で変異ウイルスが増え、それが性感染などを通じ、HLAのない感染者に広がったらしい。

(2009年2月26日  読売新聞)

エイズ患者が最初に認定されたのは1981年米国で、まだ30年経っていません。

現在全世界でHIV感染者数は5000万人でアフリカ南部が6割を占めると聞きます。

日本で初めてエイズ患者が確認されたのは1985年で、初期には血液製剤による感染という、許しがたい薬害が判明し、現在もまだ多くの被害者が苦しんでおられることに心が痛みます。

厚労省の18日の発表では、昨年の感染者数は過去最高の1113人、新たに発症したエイズ患者も過去最多の413人となっています(2009年2月18日のasahi.com)。

増加傾向はとまりません。

この数字は氷山の一角でしょうし、HIVは姿を自在に変えるエイリアン、プレデターのような相手です。

手遅れにならない内に国家規模で真剣な対応を怠らないでほしいものです。

東洋医学的な対応が有効な事をご存知でしょうか。

東方医学会会長 谷美智士博士の業績があります。

つづく

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2009年2月25日 (水)

新型インフルエンザ対策行動計画

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2月17日、政府は新型インフルエンザ対策ガイドラインを改定しました。

asahi.comでは、

新型インフルエンザの感染拡大を防ぐため、政府は17日、対策の礎となる行動計画を改訂した。海外で発生した場合にウイルスの国内流入は避けられないという前提に立ち、感染拡大の阻止や社会経済の破綻(はたん)防止を、基本方針として初めて明確に記した。

 行動計画の改訂は07年10月以来、4回目。海外で新型インフルが発生した段階から始まる政府内の連絡体制などを詳細に規定した「対処要領」も公表。各省庁が内閣危機管理官に情報を一元化させるとした。また、現在の「未発生期」から国内発生、感染拡大期などを経て「小康期」までの各段階ごとに国と都道府県、市町村が担うべき役割も新たに整理し直した。

と伝えています。

厚生労働省のサイトで全文が読めます。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/kettei/090217keikaku.pdf

児童向けのサイトでも、こんな風に紹介しています。

アサヒ・コムきっず:新型インフル「対策行動計画」 - 最新ニュース - 読もう

2009年2月19日付 朝日小学生新聞

 新型インフルエンザ対策として政府は17日、国内での流行のスピードをおそくしたり、健康被害を小さくしたりする「対策行動計画」を決めました。海外で新型インフルエンザが発生すれば、「国内侵入を完全に防ぐことはほぼ不可能」とはっきり認めているのが特徴です。

 学校は、その都道府県で1人でも患者が出たら原則として臨時休校。患者が出ていなくても、感染者のいる地域と通学などで人の行き来が多い場合など、状況によっては都道府県が休校の指示を出すよう求めています。

 ほかの病気があるなど体の弱い人は、かかりつけのお医者さんに電話で診察してもらい、薬局で薬を受け取るのに必要な書面(処方箋)をファクスで送ってもらうことも認めました。「ぜんそくのある小学生ら、いろいろな事情の人が当てはまります」と厚生労働省の対策推進室。

提供:朝日学生新聞社

行動計画の原文では、

・ 発熱外来を受診した後、自宅で療養する新型インフルエンザの患者に対し、診察した医師が電話による診療により新型インフルエンザの症状の確認ができた場合、ファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの発行を行い、薬局はその処方せんを応需する。
・ 新型インフルエンザ以外の疾患のため医療機関を受診した後、自宅で療養する患者に対し、診察した医師が電話による診療により当該疾患について診断ができた場合、ファクシミリ等による当該疾患に係る医薬品の処方せんの発行を行い、薬局はその処方せんを応需する。

となっています。

つまり、お医者さんに受診しなくても電話のやり取りだけで、薬局で薬をもらえるという便宜がはかれるという、一種の規制緩和という事です。

一方で、医薬品のネット販売を禁止するという、おかしな規制が行われようとしています。

医薬品ネット販売検討会スタート 三木谷楽天社長が猛反論
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090224/325407/

伝統薬の業界も猛反発しています。
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200902060048.html

どれだけ安全性が向上し、だれがどんな得をするのでしょうか。

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2009年2月24日 (火)

子どもを花粉症にしないための9か条

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子どもを花粉症にしないための9か条(医療介護CBニュース) - Yahoo!ニュース

 将来、子どもが花粉症で苦しまないようにするためにはどうすればよいか―。
理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克センター長が「花粉症にならないための9か条」を紹介した。

 2月23日に横浜市の理研横浜研究所で報道関係者を対象に開かれた「製薬協プレスツアー」(主催=日本製薬工業協会)で、谷口センター長は「スギ花粉症ワクチン開発」と題して講演。
この中で、
▽生後早期にBCGを接種させる
▽幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
▽小児期にはなるべく抗生物質を使わない
▽猫、犬を家の中で飼育する
▽早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
▽適度に不衛生な環境を維持する
▽狭い家で、子だくさんの状態で育てる
▽農家で育てる
▽手や顔を洗う回数を少なくする

―の9か条を紹介した。


 谷口センター長は、2003年のアレルギー疾患増加の疫学調査結果などを例に挙げて説明。
同調査によると、花粉症を含むアレルギー患者は、20歳代は80%、40歳代は70%、50歳代は40%、60歳代は30%と、若い世代ほど割合が多い。
きょうだいの数とアレルギー疾患発症頻度に関しては、第1子の発症頻度は6.3%だが、第2子は4.9%、第3子は3.1%と、第2子以降は発症頻度が下がる傾向が見られた。
 また、生後6か月以内に麻疹、抗酸菌などの感染症にかかると、アトピーになりにくいという。
6歳時点でのツベルクリン反応陽性者は喘息の発症頻度が4%、反応陰性者は16.2%だった。
 一方、生後3年以内に抗生物質を投与すると、花粉症や喘息の発症率が高くなるという。

 谷口センター長は、「
花粉症は、ある程度不衛生でエンドトキシンの量が多い環境で育つと発症しにくくなる。
逆に、下水道などインフラが完備されている所、車の交通量の多い所で育つと発症率が高くなる
」と説明した。
1987年のある統計によると、栃木県日光市内の交通量の少ない小来川地区と交通量の多い日光スギ並木地区の花粉の一日当たりの平均飛散数はほぼ同じだったが、花粉症の発症頻度は、前者が5%程度だったのに対し、後者は13%だったという。
また、96年にドイツで行われた花粉症の皮膚テストによると、旧東独のライプチヒとハレでは陽性率が7.9%だったのに対し、旧西独のミュンヘンでは21.3%だったという。

 谷口センター長は
、「幼児期でアレルギー体質が決定するという仮説は正しいことが証明された。
花粉症などのアレルギー性疾患は文明病であり、人間が物質文明を追求したために生じた免疫機能失調症だ」
と指摘。
その上で、「国民の約20%がスギ花粉症に罹患し、その経済損失は年間1.2兆円と試算されている。
既存の医薬品による対症療法のみでは、増大するアレルギー疾患患者の治癒は困難。
根本的な治療を実現するワクチン開発が急務だ」との認識を示した。


【エンドトキシン】
 細胞内毒素。細菌の死などによって細胞壁が壊れることで放出される。

原因の花粉を避けることの外に、身体の内部の原因を取り除き改善することも重要。

三日前のエントリー「スッキリ花粉症」もどうぞ。

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2009年2月23日 (月)

日中医薬研究会

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21日(土)、22日(日)は日中医薬研究会・関東支部の月例会でした。

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会場は淡路町のグリーンホテルで、画像はスタート直後です。

40名ほどの参加でみっちり充実した研修をしました。

8月24日の当ブログに、日中医薬研究会のタイトルでエントリーしています。

日中医薬研究会のホームページは、http://www.hougi.org/ですが、今リニューアル中です。

新しいサイトは、http://nittyuuiyaku-kennkyuukai.com/ で、しばらくで完全移行になる予定です。

関東支部では無料の研修体験ができます。
関心のある方は http://www.hougi.org/bosyu.pdf をご覧下さい。

関東支部への入会に関しては、http://www.hougi.org/hougi.nsf/pages/sub011 をどうぞ。

関西でも、同じスタイルで研修会が開催されています。

関西支部への入会に関しては、http://nckansai.blog69.fc2.com/blog-category-4.html をどうぞ。

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2009年2月21日 (土)

この土日はブログの更新できません

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2月21日(土)、22日(日)は日中医薬研究会の例会に終日出かけますので、ブログの更新ができません。

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2009年2月20日 (金)

スッキリ花粉症

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花粉症に苦しむあなたへ

花粉をアレルゲンとするアレルギー疾患・花粉症には日本人の一割以上が罹っており、その8割がスギ花粉によるものです。
1月からの最高気温の累積が400℃に達するとスギ花粉の飛散が始まるといわれています。
今年は2月中旬に気温が急に高くなった日から症状を呈する人が急増しました。

西洋医学的治療法も、抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬などの内服薬、点鼻薬、点眼薬、減感作療法、レーザー療法など年々進歩しています。
しかし体質改善がうまくいかない人も多いようです。

花粉症を治すには、症状の改善と同時に体質の強化を併せて行うことが必要です。
そして、正しい食生活を続けることで、再発を予防できます。

アレルギーは体質の異常。原因は外ではなく内部にある。
(自分の原因を振り返ってみましょう)

*温度や湿度の急変やホコリ、花粉などに敏感になるのは、体内の調節能力が弱いからです。
弱くした原因には次のようなものがあります。

果物や缶ジュース類などをとりすぎていた人は、皮膚粘膜に負担がかかりすぎて過敏になり、急な温度変化による過敏症状(鼻水、涙目、かゆみなど上の方に出る]を起こしやすくなっています。
コーラ・ジュース類や砂糖の多いチョコレートやケーキが多い人は賛成体質(弱い体質)になっています。
洋風な食事やむら食い、不摂生などの積み重ねが、アレルゲン(花粉など)に対する抵抗力を弱くしています。
便秘や生理異常、食毒などのある人は、血行不良や充血、炎症を起こしやすい体質になっています。

漢方療法は原因療法。

漢方薬を用いて体を温め過剰な水分を発散、排泄し、目、鼻、のどの負担を軽くし、自己免疫力を強くしていきます。

炎症、充血を解消する漢方薬によって、表面や内部のうっ血をとり、重苦しさを除いていきます。

肥満型・ヤセ型、便秘、軟便などの異常があれば、体質を改善する漢方薬で正常にもどします。

カルシウムやミネラルで酸性化している体液や細胞を短期に改善し、異常に緊張した神経や粘膜を鎮静させます。

再発を防ぐ体質づくり

血行をよくし、身体を温め、抵抗力を強化する香辛料は大切です。(栄養スパイス蘭香)
アレルギー体質の方は、果物、ビール、ジュースや生野菜を控えめに。
アレルゲンに対する抵抗力の強化には、ミネラルの多い食品が有効です。(クマザサ、クロレラ、かき肉エキス、ニガリが効果的です)
ゴマ、ハチミツ、ハトムギは健康食の三種の神器として、栄養、治療、保健上に必須のもので、慢性病、生活習慣病、体質病の改善には欠くことのできないものです。

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2009年2月19日 (木)

薬局で認知症チェック(2)

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今、認知症に汎用されている医薬品は、塩酸ドネペジル製剤で、世界で承認されている医薬品の中では最も効果が高いとされています。
日本で年間数百億円の売上だそうです。
患者の多さが反映されている数字です。
これで顕著な回復があればいうことなしですし、進行が止まるだけでも意義があると思いますが、残念ながらこの薬の効果の持続は数ヶ月と聞きます。

漢方でもとても難しい疾患なわけです。
物忘れ、記憶力・追想力が障害されていることを、「喜忘(きぼう)」「健忘(けんぼう)」などと呼んでいます。
「痴証(ちしょう)」や「狂(きょう)」という表現が認知症に該当することもあると思います。

物忘れや認知症に対して漢方は、頭の問題以外の全身症状にあわせて対策をとっていきます。
当帰芍薬散、黄連解毒湯、抑肝散、帰脾湯、などがよく使われ、瘀血を排除する駆瘀血薬を証に応じて加味するなどして様々に対応していきます。

最近のサプリメント類では、脳血流改善作用や物忘れ防止の作用があるとして、イチョウ葉、DHA、EPA、フォスファチジルセリン(脳に含まれるリン脂質)、ビンカマイナー(ヒメツルニチニチソウ)、フェルラ酸などを配合した健康食品が市販されています。
ウコンが認知症に有効との報告もありました。
これは、8月27日の漢方なブログでとりあげました。

マサキ薬局が特に注目しているのは、フェルラ酸です。
フェルラ酸には、アルツハイマー病の原因物質とされている、β-アミロイドというタンパク質の悪い作用を抑制する作用があることが判ってきています。
フェルラ酸は、米や麦の細胞膜に存在する成分で、今は糠として利用されていない部分に含まれているので現代人は、古人より摂取量がうんと少なくなっています。
この事とアルツハイマーが増加している事とが関係しているといわれています。

アルチーマ普及会のサイトに詳しいので、詳しくはそちらをご覧下さい。

フェルラ酸を含むものには、ANM176、 アルチーマJ という名前の健康食品が市販されています。

昨年暮れの、Geriatric Medicine (老年医学)12月号に、「Ferulic acid とgarden angelica 根抽出物製剤 ANM176 がアルツハイマー病患者の認知機能に及ぼす影響:中村重信ほか」という薬剤治験が発表されています。
12名の専門医による、143名のAD患者の臨床治験で、フェルラ酸の効果が確認されたという論文で注目されています。

マサキ薬局で相談をお受けしてフェルラ酸を使っていただいた多くの方にも喜ばれています。

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2009年2月18日 (水)

薬局で認知症チェック

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2月15日YOMIURI ONLINEのニュースです。

薬局で認知症チェック、「きょう何日」窓口で質問 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 日本薬剤師会(児玉孝会長)は4月から、認知症の疑いがある人を、街中の薬局窓口で見つけ出し、地域の支援センターに紹介する事業を始める。

 患者数が200万人を超す認知症の早期発見・治療につなげるのが狙い。地域の薬剤師会が協力薬局を募り、市町村との協力体制ができたところから実施する。

 薬剤師会は、一部地域で、介護予防のチェックも行っているが、今回は認知症の発見を全国で行うことにした。

 窓口では「今日が何月何日か分からない時があるか」「周りの人から物忘れがあると言われるか」などを聞く。薬の影響で認知症に似た症状が出たり、認知症が悪化したりすることもあるので、服用薬もチェック。認知症の疑いがある場合、本人や家族の同意を得たうえで、各市町村の包括支援センターに情報提供する。介護についての相談業務などを行う支援センターでは、現在、認知症連携担当者の配置が進む。この担当者が中心となり、認知症の専門医がいる認知症疾患医療センターに紹介して正確な診断や進行を遅らせる治療などを行う。国は、全国150か所に医療センターの設置を計画している。街中の薬局は全国で約5万か所ある。(2009年2月15日  読売新聞)

家族のための認知症を疑うチェックリストというのがあります。
(東京都老人総合研究所 本間昭 参事研究員の監修)
認知症を知るホームページのサイトで見ることができます。

http://www.e-65.net/check_index.html

現在の日常生活と1年前の本人の状態を比べて、19項目の様子について、「良くなった、あるいは変わらない」「多少悪くなった」「とても悪くなった」の3段階で、チェックしていきます。変わらないは2点、多少悪くなったは1点、とても悪くなったは0点と配点します。

① 曜日や月がわかるか

からはじまり、

⑲ 最近のことを忘れっぽくなったか

で終ります。

全項目の総合点数が24点以下で認知症が疑われます。

記事に「患者数が200万人を超す認知症」とありますが、2020年ごろには300万人と予測されています。

つづく

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2009年2月17日 (火)

薬効かぬアタマジラミ急増 2年で倍

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2月4日asahi.comのニュースです。 

asahi.com(朝日新聞社):薬効かぬアタマジラミ急増 2年で倍、全体の1割超に - 医療・健康

髪の毛に寄生するアタマジラミの中で駆除薬が効かないタイプが急増し、全体の1割を超えていることが国立感染症研究所(東京都新宿区)の調査でわかった。アタマジラミは病気を媒介しないが、頭皮をかきすぎて感染症になったり感染した子が学校で避けられたりしかねない。各地の保健所は薬を過剰に使わないよう専用のくしを使った駆除方法の普及に乗り出した。

 感染研昆虫医科学部は、06年から全国の保健所などを通じて集めたアタマジラミの遺伝子を解析した。駆除薬が効かない抵抗性のタイプは06年は4.76%だったが、07年6.18%、08年11.49%と倍以上に増えていた。3年間に届いた28都道府県分のうち13都道県分で抵抗性が確認され、広がりが懸念されている。

 国内で製造承認されている駆除薬は、シラミの神経細胞にある特定たんぱく質に作用し殺虫効果を持つ。しかし抵抗性のシラミは、このたんぱく質の構造を決める遺伝子の一部が従来と異なっていた。

 昆虫医科学部の冨田隆史室長は「90年代から米英仏など一部先進国や途上国で抵抗性のアタマジラミが問題視されるようになり、米国では抵抗性が全体の90%近くに上る。対策を講じないと日本でも流行の恐れがある」と話す。

 東京都には98年度にアタマジラミについて1046件の相談が寄せられた。00年度までに半減したが、06年度1125件、07年度1935件と急増した。都内の保健所は学校や保護者、理容師ら向けにパンフレットを配り、全国の自治体の講習会などに駆除方法を伝える担当者を派遣している。

 池袋保健所で環境衛生を担当する矢口昇さんによると、保護者から「感染した子を登園させないで」と求められた保育園や幼稚園からの相談も多い。矢口さんは「子どもの髪を専用のくしで丁寧にすいてあげることで、薬を使わずに駆除できる。感染源の子を探すなどの過剰反応は避けて欲しい」と話す。(和田公一)

 ■アタマジラミ ヒトの髪の毛に寄生し、根元に卵を産み付ける。頭皮から血を吸うためかゆくなる。大きさは成虫で2~4ミリ、卵は0.5ミリ。成虫は1~1.5カ月生き、約100個の卵を産む。駆除して血を吸えないようにすると2、3日で死ぬ。戦後大流行したが、殺虫剤と衛生状態の改善でほとんど目にしなくなった。現在の発生は衛生状態と関係なく、11歳までの子が約9割。体を寄せ合って遊んだり、集団で昼寝したりしてうつることが多い。

シラミの駆除剤で認可されているのは、フェノトリン製剤だけです。
スミスリンという商品名で、シャンプーとパウダーがあります。
この薬が効かないとなると、厄介なことになります。
目の細かい梳き櫛(ツゲがよい)で、何日も丹念に梳いて、物理的に駆除するしか方法がないようです。
商品にも梳き櫛が添付されていますが、これはシラミの死骸や抜け殻を除去するのが目的です。
もっと目が細かい櫛が必要になります。
薬品にアレルギーや過敏症の反応を起こす人も駆除薬を使えませんから同じことをすることになります。

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2009年2月16日 (月)

五味の相互関係

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五味の薬能(酸苦甘辛鹹)とその薬能 (「平成薬証論・渡邉武」より引用)

五味の薬味は、それぞれ補助益生剋(ホ ジョ エキ セイ コク)の五つの薬能を持っている。
所属する臓腑を補う作用と、親に当たる臓腑を助ける作用と、祖父に当たる臓腑を益する作用と、子に当たる臓腑を生ずる作用と、孫にあたる臓腑にだけには剋する作用とである。

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酸味の薬能
散らばったものを収める薬能があり、収を主どり、主作用は肝・胆と目・筋の機能を補い、その目標は青色である。
心・小腸にはその機能を生む働きがあり、腎・膀胱には働きを助け、肺・大腸には有益に働くが、脾・胃だけには剋の働きがある。
酸味には脾・胃を護るため甘味を添え、心・小腸を補う苦味を配する。

苦味の薬能
軟らかいものを引き締め、湿りを乾かす薬能があり、固を主り、主作用は心・小腸の機能を補い、その目標は赤色である。
同時に脾・胃の機能を生む働きがあり、肝・胆の機能を助け、腎・膀胱には有益に働くが、肺・大腸だけには剋の働きがある。
苦味には肺・大腸を護るため辛味を添え、脾・胃を補う甘味を配する。

甘味の薬能
激しいものを緩め薄める薬能があり、緩を主り、主作用は脾・胃の機能を補い、その目標は黄色である。
肺・大腸の機能を生む働きがあり、心・小腸の機能を助け、肝・胆には有益に働くが、腎・膀胱だけには剋の働きがある。
甘味には腎・膀胱を護るため鹹味を添え、肺・大腸を補う辛味を配する。

辛味の薬能
滞りを散らす薬能があり、散を主り、主作用は肺・大腸と鼻・皮膚の機能を補い、その目標は白色である。
同時に腎・膀胱の機能を生む働きがあり、脾・胃の機能を助け、心・小腸には有益に働くが、肝・胆にだけは剋の働きがある。
辛味には肝・胆を護るため酸味を添え、腎・膀胱を補う鹹味を配する。

鹹味の薬能
乾きを抑制し軟らげる薬能があり、濡を主り、主作用は腎・膀胱・耳・骨髄の機能を補い、その目標は黒色である。
同時に肝・胆の機能を生む働きがあり、肺・大腸の機能を助け、脾・胃には有益に働くが、心・小腸だけには剋の働きがある。
鹹味には心・小腸を護るため苦味を添え、肝・胆を補う酸味を配する。

この相互関係は、病の進行の形を示してもいます。
病の進行を予測して、未然に防止する対策をとるための根拠になるものでもあります。

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2009年2月14日 (土)

五味調和(4)

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二味、三味の配合。

五味間の関係は五味調和の図上で右回りに当人・子・孫・祖父母・両親の関係に対比することができます。

Bessi1034

また五味には夫々の配置からその間に補・生・剋・益・助の関係が存在します。

例えば脾胃を悪くすると次に腎膀胱が悪くなり、さらに肺大腸を損ないます。

これを家族関係に置き換えると、当人(脾胃)が病気になれば孫(腎膀胱)の世話ができなくなり、ついには身近な子(肺大腸)の世話もかなわなくなると云うことにります。

この原理を把握していれば未然に害の及ぶのを防ぐことができます。

脾胃が悪いときは先ず第一に甘味で補います。

次に腎膀胱に害が及ぶのを鹹味で防いでおく。

これが二味配合の原則です。

第三に被害を受ける肺大腸までを辛味で防いでおく甘鹹辛の配合が三味配合の原理です。

調理においては甘味の素材を引き立てるために、相剋を活用して塩(鹹味)を隠し味とします。

甘味店でぜんざいを注文すると塩昆布が添えて出てくるのは、甘味によって腎にかかる負担を防ぐためで、これは二味配合の原則に則っています。

さらにこの塩昆布に山椒が加わっていれば肺大腸の守りまで気を配った三味配合の原則に適った組合わせになっています。

酒の呑み過ぎが肝を傷めることは周知のことです。

酒(辛)の害を防ぐ呑み方は、先ず肴に相剋の酸味のものをとって肝を守り、更に辛から見て子の位置の腎膀胱に害が及ぶのを防ぐために鹹味のものを食すことです。

これが二味・三味配合の原則に適っており、そうすることが味覚的にも美味になるのです。

現に日本酒好きの人は、酢の物や塩辛を好みます。

またメキシコの強い酒テキ-ラは、レモンに塩をつけ噛りながら呑むのが常道です。

これらは正に三味配合の実行そのものと云えます。

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2009年2月13日 (金)

鹹味(かんみ)の食能

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五味の食能の五つ目は、鹹(塩からい)食べ物の役割についてです。

鹹(かん) 塩からい味で軟らげる作用があり、腎・膀胱・耳・骨によい。

  ┌温…めざし・干物・栗・みそ
鹹┼平…しじみ・ひじき・わかめ
  └寒…食塩・のり・かに・こんぶ

鹹味の食べ物は食塩・味噌・醤油をはじめ一般に塩辛い、塩化ナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどミネラルの多い食べ物です。

それらは人体の腎臓・膀胱の働きを補い、骨髄を健強に保ち、肝胆の働きを活発にし、肺・大腸や皮毛や呼吸器の働きを助け、脾臓と肌肉に有益に作用します。

ただし塩分は、心臓循環系に負担をかける欠点があるので、食物の調理には、心臓のオ-バ-ヒ-トを抑える苦みを添えることが大切です。

天然の食塩と緑野菜には苦汁(マグネシウム塩)が含まれています。

静物である植物は、陰性のカリウムが主体となり、動物や人間は、陽性のナトリウムが主体となっています。

血液や肉類に0.7%の塩化ナトリウムが含まれているように、塩分は人体に必須の食べ物です。

「塩気が足りぬと力がでない」と云われますが、塩分が欠乏すると、尿が出にくくなり、水分代謝の逆流が起こって、神経の活動が遅れ、筋肉の収縮力が弱くなることを、近代医学的にケンブリッジ大学のホジキン教授らが実験で実証しています。

塩分が不足した人は行動がスロ-モ-になり、筋肉の活動が低下し、頭脳の働きが鈍くなり、しまりのない人となり、遂には赤ちゃんか、恍惚の人のように、よだれを垂らすことになります。

涎は人の排泄する体液の中で、塩分がもっとも少ないものだからです。

最近の食塩恐怖症による減塩は、水分代謝の逆流を招いて、皮膚炎・アレルギ-症・鼻炎・花粉症・浮腫・神経症などを悪化させています。

何故なら、塩分がなくては、汗も小便も出せないので、皮膚や頭部や鼻から気体として水分代謝を強いられているのが、これらの疾患の一番大きな原因だからです。

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2009年2月12日 (木)

辛味の食能

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五味の食能の四つ目は、辛い食べ物の役割についてです。

 からい味で発散作用と体を温める作用があり、肺・大腸によい。

  ┌温…酒・紫蘇・にら・芥子・生姜
辛┼平…さといも・ねぎ
  └寒…ずいき・

近代薬学では、桂皮、茴香、月桂葉、紫蘇葉、などを芳香性健胃整腸剤と呼び、芥子、胡椒、山椒、蕃椒、生姜などは、辛味性健胃整腸剤と呼んでいます。日本では、これらを薬味とよんで常用してきました。

香辛料は、蛋白質の消化吸収に不可欠の食品で洋の東西を問わず調理に欠かせない食品です。ことに肉食には必須の調味料で、欧米では一般家庭で40~50種のスパイスを常備しています。

一方日本の家庭にはせいぜい4~5種の薬味しか常備していないのが実情で、肉を食べなかった江戸時代以前の食習慣のままです。

日本食と中国・欧米の料理を比較すると、日本食は魚介を加えた菜食・米食(粒食)が主食ですが、中国料理や洋食は牛・羊・豚などの大動物の肉食と小麦(粉食)が主食になっている違いの他に、島国と大陸との環境・気候の相違から、鹹(塩からい)味と辛味(香辛料・薬味)の摂取量にも相違があります。

明治時代までの日本食では、塩分は多め、辛味は少なめで、欧米食や中国食では反対に、塩分は少なめ、辛味は多めです。

今日欧米風にビ-ルや清涼飲料水を多飲し、米食・菜食して多湿の日本で生活する限りでは、塩分は多い目にとり、欧米風・中国風に肉類を多食するのなら、辛味も多い目にとるのが食養生の原則です。

香辛料(日本名は薬味)の役割

役割(薬効) 実例
消化を助け胃腸の機能の負担を軽くする

消化に時間のかかる食品に用いる : 天ぷら(大根おろし・根しょうが)。さんま(大根おろし)。かばやき(粉さんしょう)。トンカツ(ねり辛子)。ホルモン焼(とがらし・にんにく)。焼き鳥(七味・さんしょう)。
水っぽいもの、噛まずに食べるものに用いる : うどん(七味・ネギ)。そば(ワサビ・ネギ)。冷奴(ショウガ・ネギ)。お茶漬(ワサビ・ミツバ)。ラーメン(コショウ・ニンニク)。鍋物(ポン酢・粉サンショウ・もみじおろし・ワケギ・春菊)

体内の血流を促進して冷えを除く 酒(飲んべえを辛党と言い、薬味の王者とする)。トウガラシ(凍傷に用い、白菜漬物、茄子漬けに用いる)。冬の鍋物。寒い日のウドン。おでんのとき辛子。冷える茄子のシギ焼(根ショウガ)
皮膚からの発刊発散を活発にする 風邪の初期に汗をとる 卵酒(酒と根ショウガと卵)。ネギ湯(白ネギと根ショウガとみそ)。インドやタイ国のお国料理(発汗を良くする事により暑さに耐える)。うどん、ラーメンは薬味が加わる故に汗が出る
腐敗を防ぎかつ殺菌効果を有す 刺し身を千本大根にのせ、シソの葉にのせる日本人の知恵。昔からワサビは蕁麻疹の薬であった。魚を松葉やしょうがの葉にのせたり包んだりしてきた。明太子は冷蔵不要。肉類の保存にコショウをふりかけると日保ちがよい。
便通を正常化する かって日本人は漬物に多くのトウガラシやカラシを加えて漬け込み、さらに七味などを加えて食べていた時代には老人性便秘や弛緩性便秘はみられなかった。朝鮮の人達はいう「日本の医者はウソつきだ。痔になっら辛いものを止めよと云うからだ。わが国ではキムチを毎日ドンブリ一杯食べよと云う。3日で治るものだから」と。辛党(酒飲み)には便秘はいない。
心を安らげストレスを解消する 全身の血行をよくする故に頭に血がのぼるのを解消する。酒は心をリラックスさせ、ミョウガに至っては食べ過ぎれば物忘れしやすいので別名バカとも呼ぶ。中国人やインド人の穏健な性格も香辛料の常用による。ハッカやシソはストレス性頭痛によく効くという民間療法は体験に基づくもの。

五味調和、五味の食能に関するエントリーは、日中医薬研究会創設者・渡邉武博士の著作・講演を引用しています。
辛味の役割の表は、日中医薬研究会・落合富雄先生制作のものです。

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2009年2月11日 (水)

甘味の食能

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五味の食能の三つ目は、甘い食べ物の役割についてです。

 あまい味で緩める作用と滋養強壮作用があり、脾胃によい

  ┌温 うどん・鰻・鮪・鯛・牛肉
甘┼平 ごま・大豆・米・甘薯・蜂蜜
  └寒 砂糖・なす・きうり・柿


甘味の食物は調味料の砂糖・蜂蜜・水飴・甘草・大棗などだけでなく、食物療法(食養)上では穀物・豆類・魚や肉類など、主食となる食物が属しています。

ですから不自然な精製糖や酸糖化の飴などはこの原理に反していて食害がありますから除外しなければなりません。

甘味の食物は上下左右と寒熱の歪みのない平の食物ですから常食されます。

しかも甘味の食物にはこれらの歪みを平にする重要な働きがありますから、酸苦・辛酸の味を和らげマイルドにして食べやすくしてくれます。

ことに酸味の強い食物には少量の蜂蜜や砂糖を加えると酸味が和らいでおいしく頂けます。

甘味には緩和する、ゆるめる、うすめる薬能があります。緊張をゆるめる、激痛をゆるめる、中毒を解毒する、熱をゆるめるなどの働きです。

何年か前に毒殺事件で有名になったトリカブトは漢方では冷えによる痛みや下痢、四肢の痛みなどには欠かせない薬物です。

その毒性をゆるめたり解毒したりするために、甘平の黒大豆と甘草の煎液を使い、服薬時は必ず蜂蜜や甘草をあわせて使います。

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2009年2月10日 (火)

五味調和(3)

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陰陽五行と調理の原則。

中国の医薬・食物・物理療法の文化は、欧米の民族が持っていない宇宙観と東洋哲学・自然医学を基礎に展開されています。

その基本原理が「陰陽虚実」と「陰陽五行論」と呼ばれる哲学で、中国医学の原典「黄帝内経素問」に説かれています。

それによると、森羅万象を陰と陽に規定しています。

陰とは寒・水・下・右・腹・地・内で、陽とは熱・火・上・左・背・天・外になります。

この原則が人間という小宇宙に適応されると、陰陽とは、病態の位置と質を示すものになります。

そして陰陽の量的表現が虚実ということです。

虚とは、陰(水滞や冷え)が多く、熱や陽(血)が少ないもの、実とは、熱や血症が多く、陰の冷えや水滞が少ないものを言います。

陰や陽という抽象的なことばの量的な偏りを示したものと言えます。

陰陽寒熱・上下・左右に歪みが生じたとき人は病気になりますが、これを是正する為に病像・病症と反対の薬性・食性のある漢方薬・食物で中和して正常化をはかるというのが漢方の基本的やり方なのです。

そのために、五行論に基づいてすべての薬物と食物について、酸・苦・甘・辛・鹹の五味と寒・熱・温・涼・平の五性が設定されています。

これは欧米では未開発の漢方独特の方法論です。

五味調和の食性表は、陰陽五行の座標の上に、日本の食材と中国料理の食材の一部を配当したものです。

これが薬剤の調剤と、食物の調理の原理の集約といえます。

何を食べるかという事と同時に、それを如何にして食するか、如何にして服むかを指示している、先人の貴重な遺産です。

食養の第一原則は、寒熱(陰陽)によって食べ方が違うことです。

陽(熱)・血症のあるとき、つまり便秘や発熱・出血・炎症のある時は、寒涼剤である苦味・酸味のものを食べねばならないし、陰(寒)つまり冷えや貧血・下痢などのときは、温剤の辛味・鹹味のものを食して冷えの原因の水滞を体外に排泄する利尿剤を服さねばならないということです。

一般論として、食性表に示すとおり、各器官が弱ったとき、それが胃であれば甘味のものを、腸や呼吸器なら辛味ものを、腎臓や膀胱には鹹味(塩からい)のものを、肝臓・胆のう・筋肉・目には酸味のものを、心臓・血脈・小腸・舌に炎症があれば苦味のものを食するのが原則です。

但しこれらの食物も、大なり小なり相剋に当たる(点線の矢印が指す)臓腑器官に、食害を与える事も知っておかねばなりません。

それはまた病気の転移の原理でもあります。それ故、甘味を食するときは、同時に塩味のものを添えて腎を補い、辛味を食するときは、肝胆を補う酸味を添え、苦味を食するときは、肺・大腸・皮毛を補う辛味を添える………という「二味配合」の原理があるのです。
これは味覚の面でも、それぞれの味が調和してマイルドになり、よりおいしく感じられます。

Gomi2

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2009年2月 9日 (月)

五味調和(2)

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東洋医学は食物療法を優先する。

料理は人間の基本的な生存条件です。各民族がそれぞれに伝えてきた伝統料理は、その土地の気候風土や生活環境に順応する形で残されています。
日本に伝えられる郷土料理や家庭料理もまた、日本の気候風土や生活環境と密接に関連しています。

東洋医学の原理原則は、人体を陰陽五行にみたてて、自然(宇宙)の何たるかを解明し体系化した東洋哲学の陰陽虚実の原理を、人体もまた一つの自然、小さな自然(小宇宙)であるとみたてて、これにあてはめ解明規定した自然医学の原理です。
東洋医学には食物療法、薬物療法、物理療法の三分野がありますが、漢方薬の薬物療法や鍼・灸・気功などの物理療法よりも、食養とよばれる日常の食物療法の方が優先されています。

病気になってしまってから飲む薬は、それが近代薬であれ、漢方薬であれ、これを小薬と称し、これに対して病気にかからないように心身の歪みを正常化し、健康保持と不老長寿のために毎日食べる食べ物の方を大薬といっていますが、これは食べ物が何物にも勝る薬であることを教えています。

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2009年2月 7日 (土)

苦味の食能

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酸味の食能に続き、五味調和の二つ目の話は、苦い食べ物の役割についてです。

 にがい味で消炎と固める作用があり、心臓によい。

  ┌温 よもぎ・ふき・たらの芽
苦┼平 うど・ぎんなん・春菊
  └寒 お茶・ビ-ル・たけのこ

薬には苦くて飲みにくいものが多くても、古来良薬は口に苦しと言われていますが、食物では苦味のものは敬遠されます。
しかし懐石料理の名人、京都の辻嘉一翁は「甘味の料理は未熟な料理人でも調理できるが、苦味を活かした料理こそ達人の料理である」と言われました。
中国の本草学では、「苦味の食物や薬物には、強心・消炎・止血・解熱・鎮痛・利尿の諸作用があり、また幅広い薬効もあり、心臓がオ-バ-ヒ-トした時や、血液障害などの人体の熱症を冷ます寒性を持っている」と、欧米民族間では開発されていないユニ-クな陰陽寒熱による薬理学を提唱しています。
 
近代医学でも強心薬として使用される薬物は、苦味配糖体や苦味のアルカロイドが主力でいずれも利尿作用を併せ持っています。
陰陽論の原理から、苦味のものは、ひきしめたり、固める作用があり、苦汁が大豆湯を固めて豆腐になるように、血液が凝固して止血作用が現れるのです。

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2009年2月 6日 (金)

五味調和

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食養生の基本、五味調和の原則についてのおはなしです。

古来、中国では「薬食同源」と云い、体を治す為に薬と同様に食を重視しました。
五味とは酸・苦・甘・辛・鹹(さん・く・かん・しん・かん)の五味が、どの臓腑器官にどう作用するのか、五性とは寒・熱・温・涼・平の五つに効能を分けて、温めて機能を亢進させるもの、冷やして炎症を静めるものなど、あらゆる薬材、食材の効能を五味五性で規定し、五味調和の原則に基づいて、健康を回復する食事は調理され、病気を治す薬は調剤されました。

冷え性のものには暖まる食品を与え、熱症状の体質には冷やす食品を調理するのが寒温の調和です。
また、肝と腎の両方が弱っていれば、酸鹹二味の食材料を寒温整えて調理します。
.体に本当に良いものは舌が美味しいと感じます。
.中国料理が世界一美味しい秘密はここにあり、治療食・健康食として「薬膳」が注目されているのは当然と言えます。


*酸味(さんみ)は、収斂作用があり、肝・胆・目に良い。
   りんご・梅・ゆず等血液の流れをサラサラにし動脈硬化や梗塞を防ぎます

*苦味(にがみ)は、消炎と固める作用があり、心臓によい。
よもぎ・うど・お茶等充血炎症や心臓のオーバーヒートを和らげます。

*甘味(あまみ)は、緩める作用と滋養強壮作用があり脾胃によい。
うどん・米・砂糖等いわゆる旨味の中心で体の栄養になります。
甘味を体に合わせて上手に摂取する為には調和が必要です。

*辛味(からみ)は、発散作用と体を温める作用があり肺・大腸によい。
生姜・ねぎ等香りのものスパイスやハーブでくしゃみ、鼻水、鼻づまり、皮膚病、腹が冷える方や、便秘しやすい方はタップリお摂り下さい。

*鹹味(しおからみ)は、軟らげる作用があり、腎・膀胱・耳・骨によい。
めざし・わかめ・食塩等小便を出すためには塩が必要です。
多からず少なからずです。

五味の関係を知って、食べる時は単味ではなく最低二味を組み合わせます。
例えば辛味の代表お酒を呑む時は、その害を防ぐ呑み方は、肴に相剋の酸味のものをとって肝を守り、更に辛から見て子の位置の腎膀胱に害が及ぶのを防ぐために鹹味のものを食すことです。
現に日本酒好きの人は、酢のものや塩辛を好みます。
またメキシコの強い酒テキーラは、レモンに塩をつけて齧りながら呑むのが常道です。
これらは正に三味配合の実行そのものと云えます。

五味調和の図はこちらです。

Gomi2

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2009年2月 5日 (木)

酸味の食能

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酸っぱい食べ物の役割について、きのうのつづきです。

  ┌温 梅肉・酢・リンゴ・すもも
酸┼平 梅・かりん・ヨ-グルト
  └寒 ユズ・だいだい・かぼす

塩梅(あんばい)という言葉は、調味に使う塩と梅酢の程合いを意味し、味加減や調味のことを表現するのですが、あんばいが悪いという様に健康度を示す言葉にもなっています。
この由来は、五味の調和の上でも健康保持の為には、塩加減と(梅の)酸味との調和が大事なことにあります。
酸味の薬の基本薬能は「肝ヲ補イ、腎ヲ助ケ、肺ヲ益シ、心ヲ収メル」ですが、漢方薬には酸味の薬の使用頻度は非常に少なく、酸味は食物からとることが前提になっているというのが重要な漢方の基本原則なのです。

酸味は肝・筋肉・目を補います
肝機能に異常を指摘された人にとって、天然の酸味の補給は治療効果をあげる為に重要な食養生です。
玄米酢や蜂蜜黒酢を飲むことで肝機能障害から回復したり、糖尿病・肥満・高血圧・高脂血症やメタボリックシンドロームが改善した人の例は珍しくありません。
肝臓に負担をかける酒を飲む時は酢の物を肴に加えると肝臓を守り、悪酔いを防ぎます。
スポーツで筋肉が疲労したときに選手がレモンをかじりますが、これは酸味の働きから言って理にかなっています。
また眼病の人も天然の酸味の補給に心がけることが治りを早めるポイントです。

昔は酸っぱかった果物、リンゴ・ミカン等が最近は品種改良(食養上の観点からは改悪)されてみんな甘くなっています。
今はもう果物から酸味を補給する事はしにくくなってきています。
しかしレモンは大量に輸入されていますし、スダチ・カボス等、昔は産地でしか手に入らなかったものが最近はその季節には店頭に並びますから鍋物・焼き魚・フライ等の料理には必ず添えたいものです。

酸味の代表として重要なものにがあります。
梅の実の酸味はクエン酸・リンゴ酸・コハク酸・酒石酸などです。
グラム陽性・陰性腸内細菌に対し抑制作用があり、各種真菌に対して抗菌作用があるので、下痢や食中毒に応用されます。
梅の酸味は食品に鮮度を保ち、腐敗を防ぎ、脂肪を中和し、口中をさわやかにして食味を進めます。また、疲労や夏負けの原因となる血液の酸性化を防ぐ、アルカリ食品の雄でもあります。
昔と比べると最近は梅干を食べる事も減ってきているようです。
食卓に常備して1,2個は毎日食べるようにしたいものです。

次に日本人にとって最適の酸味補給源といえば、、それも半年以上も醸造つぼの中で寝かせて熟成した昔ながらの玄米酢です。
この玄米酢のよさの秘密は熟成によって生まれる多種の有機酸とアミノ酸が含まれていることにあります。
これが肝臓の栄養になって肝機能を改善し、代謝を良くし、様々な病邪を排除する効果につながっています。

最近は、表面的な味覚だけの合成酢や酢酸酢が横行していますから、美味な正しい自然酢や熟成した玄米酢(市場で安売りされている速成の玄米酢では効果が劣る)を常用することが肝要です。

   (渡邉武博士の著作、講演からの引用です)

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2009年2月 4日 (水)

命の燃料酢が肝心、東大チーム解明

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2月4日asahi.comのニュースです。 

極度の飢餓状態にある人や糖尿病患者にとって、酢がかなり重要なようだ。東京大先端科学技術研究センターの酒井寿郎教授(代謝学)らがマウスで明らかにした。3日付米科学誌セル・メタボリズム(電子版)に掲載される。

 体内では、代謝によってできるATP(アデノシン三リン酸)が、体を動かしたり体温を維持したりするエネルギー源となっている。ATPを生み出すには、瞬発系の運動ではブドウ糖を、持久系の運動だと脂肪酸やケトン体を主に使うことが知られている。

 チームはATPをつくる代謝経路に酢酸も関係していることに着目。遺伝子操作し、ブドウ糖や脂肪酸は代謝できるが酢酸は代謝できないマウスをつくった。このマウスと正常なマウスで、エサを与えた場合と48時間絶食させた場合を比較。酢酸を代謝できないマウスだけが、絶食状態のときに著しく体温と持久力が低くなることがわかった。

 酒井教授は「ブドウ糖の吸収、利用が極端に低い糖尿病患者に、血糖値を上げないエネルギー源として酢が役立つかもしれない」としている。(小林舞子)

酸味の食物のはたらき

酸味は、収斂作用があり、肝・胆・目によい。

古来、物事の大事なことを肝腎といい、調味の加減、味加減から健康度を表すのに、塩梅といって、酸味を重視しています。
それにもかかわらず、漢方の薬物療法の分野では、酸味薬もその薬方も極めて少数です。
これは、肝胆の病の療法は、直接補瀉より間接補瀉が主体であり、酸味は日常の緑野菜・果物・酢・梅干などから補給されていたことを物語っています。
今日の日本の食生活を見ると、青野菜と梅干や食酢の摂取の激減に加えて有機酸の補給源であった柑橘類やリンゴなどの果物が、酸味の少ない甘味の多い果物に変わってしまい、肝胆の備えがおろそかになった結果、肝炎、肝硬変、眼病から癌疾患までが激増しています。
五味の中でも特に酸味の摂り方の改善が大切な時であると言えます。

酢や天然の酸味は、食品の鮮度を保ち、腐敗を防ぎ、脂肪を中和して淡白にし、口中を爽やかにして食味をすすめ、疲労や夏負けの原因である血液の酸性化を弱めます。
筋肉疲労、肝に負担のかかる宿酔いや動脈硬化にも効果が認められています。
ただし酢を飲みすぎると胃をいため、冷し過ぎますから、二味の配合の原理にしたがって甘味を加えた二杯酢とし、さらに辛温の酒を加えた三杯酢としても使用します。
漢方では肝臓の窓は目ですから、めまいや赤目・青目には酸味を、口の苦み・のどの乾きや吐き気を覚えたり、食欲不振・胸や脇の圧迫感を自覚したり、微熱のある時は、酸味と甘味・苦味の適応症と指示しています。(マサキ薬局ホームページ)

つづく

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2009年2月 3日 (火)

藍染のアイに抗インフルエンザウイルス作用

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藍染では廃棄・・・茎にインフルエンザウイルス抑える効果 asahi.com(朝日新聞社)

廃棄物に抗ウイルス効果があった――。
大阪府富田林市で生薬加工業を営む堀川豊勝さん(59)が中国の漢方薬にヒントを得て、植物「タデアイ」の茎のエキスを調べてもらったところ、流行しているA型インフルエンザのウイルスの増殖を抑える効果があることがわかった。
タデアイの葉は藍(あい)染めに使われるが、茎は捨てられている。
企業と組み、加湿器やマスクに利用するなど商品化を目指している。

といいます。

特殊な技術で取り出した葉と茎のエキスを北里研究所(東京)に送って分析してもらうと、濃度2%の茎のエキスが10分以上H1N1(Aソ連)型と接触すると、増殖を抑え込む効果があった。
同研究所の小林憲忠・メディカルセンター病院研究部長補佐(43)は「幅広いA型ウイルスに効く可能性がある」と話す。
茶やナガイモなど食品で坑ウイルス効果を持つ物質はあるが、「入手コストの安い廃棄物を有効利用している点でユニーク」(小林部長補佐)という。

堀川さんは、

かつて河内木綿を使った藍染めが盛んだった地元の南河内地区で、遊休農地を使ったタデアイの栽培を構想。「茎はエキス抽出に、葉は染色に使って地域の活性化につなげたい」と夢を膨らませる。(白木琢歩)

とあります。

漢方薬の原典「神農本草経」に藍(あい)が上品に分類されて収載されています。
タデ科の蓼藍(たであい)だとされています。

薬用植物(渡邉武著)には、

藍実は解熱・解毒薬となり、民間では新鮮な藍の葉の汁液を毒虫による虫さされや腫毒に外用する。
葉藍は主として藍玉に加工して染料・絵具および薬用に供される。

となっています。

藍は種類が多く、木藍、菘藍、馬藍、呉藍などと呼ばれるものもあります。

藍の字が入っている生薬で、最近人気があるのが、板藍根(ばんらんこん)です。
これは、中国で抗ウイルス作用があるとして注目され、数年前に健康食品として日本に入ってきてちょっとしたブームになり続いています。

抗ウイルス薬は、天然(由来)物に光明が見出されそうです。
そういえば、タミフルも八角(はっかく)由来でしたね。

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2009年2月 2日 (月)

木簡にインフルエンザ治療法

ふじみ野市 マサキ薬局 の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。

2月1日読売新聞朝刊・くらし教育面のコラム「立体考差」が表題のテーマです。

漢方医学の性格の一面を正しく捉えて紹介されていると思います。

ネット上ではこのコラムは掲載されないようなので全文引用します。

編集委員 小出重幸

インフルエンザの特効薬として登場した抗ウイルス剤「タミフル」が効かない耐性ウイルスが今冬、日本をはじめ世界各地に蔓延、医療関係者をあわてさせている。
国立感染症研究所によると、耐性ウイルスが出現した「Aソ連型」は今冬の国内患者の過半数(53%)を占め、ウイルスの大半(99%)が耐性を持っていることが確認されたからだ。
野鳥など野生生物にも広く分布するインフルエンザと、人類はどのように付き合ってきたのかー。

中国では古くから「傷寒」と呼ばれてきた。
もちろんウイルスが見つかっていたわけではないが、「発熱、悪寒、関節痛、全身倦怠感などの激しい感染症を傷寒と名づけ、現代の病名では、インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)などがこれに当たる」と、真柳誠・茨城大学教授(中国科学史)は語る。
驚いたことに、ゴビ砂漠やシルクロードの遺跡から発掘される漢代の「木簡」には、病気の特徴的な症状や治療薬がしっかり記録され、「トリカブト、細辛、桂皮、生姜などを煎じて飲むと、発汗して回復へ向かうー」などとある。

三浦於莵・東邦大学医学部教授は、現代のインフルエンザでもこの治療法が十分通用すると語る。
「現在も使われている麻黄附子細辛湯や葛根湯などとほとんど同じ処方。
かかったかなと感じた発病初期にすぐ飲んで、体を温めれば、抗ウイルス剤に劣らない治療効果があるのです」

原因となる病原体を突き止め、直接攻撃する治療法で西洋医学は発展した。
一方漢方医学は体の抵抗力を支えることを主眼に治療体系を作ってきた。
感染症対策の専門家、国立衛生研究所の、岡部信彦・感染症情報センター長は、インフルエンザに対処するためには両方の治療手段が不可欠だと説く。

「タミフルに代わる新しい抗ウイルス剤やワクチン開発も進んでいるが、インフルエンザには複数の治療手段が必要だ。
若い元気な世代にまでタミフルを処方するような治療法は日本だけで、適切ではない。
漢方医学の治療手段も活用して欲しい」

明治初期以降、医師教育からはずれていた漢方医学が、大学医学部のカリキュラムに復活したのは2001年。
現在は、全国に80ある医学部のうち69で必修となり、漢方薬の基本を学んだ医師たちが、臨床現場に赴任してきている。

「葛根湯を飲めば汗をかく、これは免疫物質が体内でつくられ始めたサインだというようなことは、最近の研究でようやく判明したのです」(三浦教授)

漢方医学の中核には、自然の回復力を健康の礎にしようとする養生思想がある。
歴史の淘汰から生き残った伝統医学の知恵を、私たちも身近に取り戻したいと思う。

漢方では病気の原因のうち人体の外にあるものを「邪」という概念でとらえています。
邪は、寒邪(かんじゃ)・風邪(ふうじゃ)・暑邪・湿邪・燥邪・火邪の六つあるとし、六淫とよばれます。
当然そのいくつかが複合するケースもあるわけです。

現代でいう病原体は邪ということができます。
寒邪に傷(やぶ)れた病気が、上にある、「傷寒」なのですが、インフルエンザや感冒は傷寒だけでなく、寒以外の邪におかされた場合も含んでいると考えられます。
かぜは風邪と書きますね。
ちなみに風邪に中(あた)ってかかった病は、中風(ちゅうふう)という病名になります。

人体の生理を漢方的(人間工学的)に細かく把握した上で、病邪に対してはきめ細かく対応する方法論を確立しているのが漢方のすばらしさです。

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