国内のおいしいものを作る人をいかに“食べ支える”か
ふじみ野市 マサキ薬局 の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。
「食のたからもの再発見プロジェクト」の島村菜津研究員(東京財団)の報告
農村の高齢化や限界集落の問題、自給率の低下といった課題が山積する日本の食の現状について、「食のたからもの再発見プロジェクト」の島村菜津研究員がこれまでの調査で明らかになった点を報告し、生産者を“食べ支える”ことの大切さを訴えます。
注目すべき部分をピックアップしてみます。
前半期の調査の中で、はっきりとわかってきたことがある。
それは、“食の安心安全”や相次ぐ食品スキャンダルに、私たち消費者が不安になる一方で、国内で今、食べ物を作り続ける人々は、その何倍もの不安に晒されているということだ。
取材をした方々から、“高齢化”や“限界集落”といった言葉を幾度となく耳にした。
「農村じゃ、毎日のように葬式だもんな。若い人はなかなか継がないし・・・」
「次に世代には、本当に、誰が食べ物を作っていくんだろうね」。
「8千人の人口は7千人を割り込み、近未来には5千人台となるでしょう。そして、限界集落化していく危うさがあるようです。日本全国過疎地イコール廃墟に向かうのでしょうか。」
平成最大の農地改革といわれた法律によって、4ha以下の小さな農家は、実質補助金を受けられなくなった。
小さな畑や田んぼが基本だった日本の農家は、動揺と怒りを隠し切れない。
近頃、日本では、よく、昭和30年代のチャブ台を囲んでいたころの食生活に戻るのが理想的だといわれる。
今よりずっと海藻や小魚も食べたし、何より米をしっかり食べた。
肉はまだ貴重品だったし、油の消費も少なかった。
自給率も、今では39%だが、これもまだ70%を誇っていた。
だが大切なのは、農家や漁師の暮らしが成立ち、若い人が後を継いでも、きちんと経済的に成り立つことである。
「毎年、11万人の農家が日本から消えています。怠けていたのではない。
がんばって、がんばって、力尽きたのです。
沿岸部では、毎年、1万人以上の漁師が確実にいなくなっている。
このまま、減り続ければ、20年後には、日本の浜には漁師がいなくなるでしょうな。
その時になって、国産の魚がいいなんて無理な贅沢を口にしても、もう遅い」と、長年、東北の村々をめぐってきた憂国の士が強い口調でつぶやくのだった。
だから、私たち食べる側は、やれ「そもそも補助金づけの行政が、農家をダメにした」だの、自分はペットボトルで外国の水を飲みながら、「農薬を一滴も使うな」などと尊大なことを言っている場合ではない、と結城さんは言うのだった。
そして、この食のグローバル化の中で、食べる側にも、作る側にも要求されるのは、大きな意識改革である。
食べ物を与えてくれる自然が、修復不能なまでに傷めつけられてしまえば、元も子もない。
そして、食べ物を作る人がいなくなってしまえば、グルメもへったくれもない。
この調査で、あえて、農業の近代化や遺伝子組み換え技術などの恩恵とは無縁な、少数派の生産者たちを主役に添えたのは、そのためだ。
彼らの人間力は極めて高く、その暮らしには、ちらりと覗いただけでは理解できない英知が詰まっている。
大型機械を使う大規模農業やハイテクを駆使した大型漁業の恩恵に未来がないは言うつもりはない。
ただ環境問題が予想以上の速度で押し寄せてきた今、私たちが学ぶべきは、過去に数百年の単位で続いてきた持続可能な暮らしであり、エネルギーを極端に消費せず、天然資源を枯渇させることもなく、日本の風土に合わせて、おいしいものをつむぎ出してきた人々の技であり、知恵なのだと思う。
そして私たちが、食をめぐるさまざまな報道に翻弄される間も、日本の深い味を支える人々は確実に減っている。
「食のたからもの再発見プロジェクト・写真展」が開かれます。
2008年9月25日~10月1日(入場無料)
日本財団ビル1Fバウ・ルーム(港区赤坂1‐2‐2)
オープニングレクチャー
「食べ支えよう、食のたからもの」
9月25日18時30分~20時30分
スピーカー
島村菜津
山口博
定員:150名(入場無料)
展覧会趣旨
かつて日本各地には土地に伝わる昔ながらの素材や加工品が豊富にありました。
しかし、近年のグローバリゼーションと食流通システムの発展に伴う食の画一化・均一化により、日本の生産者は後継者不足や資金難に直面し、かつてない危機的な状況にあります。
失われつつある日本古来の食文化と、継続的生産が危ぶまれている食材、それを支える生産者や生産地を、わたしたちは「食のたからもの」と呼び、日本各地で取材し、農家や漁師の声とその地域の暮らしを伝えています。
美しい写真に彩られたレポートをご覧いただき、日本の食文化の素晴らしさと、その裏にある農村の高齢化や限界集落の問題、自給率の低下といった課題が山積する日本の食の現状を再認識する機会にしていただければ幸いです。
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