立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花(4)
ふじみ野市 マサキ薬局 の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。
今日のテーマは、百合(ユリ)で、渡辺武先生の「薬草百話」の解説を紹介します。
ユリは気毒、気の滞りという、現代薬では精神、神経の薬にあたる、無形の分野の補正薬である。
ユリの語源は「大きな花が風邪にゆりうごく」、「鱗芽が多くより合う」、「花が美しく栄ゆる」などから出たといわれ、鱗芽を乾した漢薬百合は、多量の澱粉と蛋白質、脂肪を含み、薬性は「甘平」で、消炎、鎮静、鎮咳、利尿薬として用いられる。・金匱要略の百合病
漢方薬の原典といわれる「金匱要略」(後漢紀元217年・張仲景著)には、百合病篇があり、つきものでもあるのか、祟りでもあるような現代医学でも手に負えないような神経症、ノイローゼ、欝病にあたる病像を百合病と名付け、百合を配合した薬方で治療する項目が残されている。楚々とした美女の姿を、「歩く姿は百合の花」とたとえたのは、繊細な神経、移り気な精神を安定させる百合の適応症を支持したものである。
中国の百合は、ユリ科の白花のユリで唐時代から明の本草綱目に至るまでの文献まで、食用の巻丹(オニユリ)ではないとしている。日本の江戸時代の漢方家たちは、邦産品では、関西地方に多く野生しているササユリを賞用し、関東に多いヤマユリは二級品としている。
中略
ユリの花は強い芳香を放つので、香り高いものは、皮膚や頭髪、鼻、呼吸器、大腸に有効であるという、漢方の五行説の気剤の概念からもその応用が開けたものと考えられる。
奈良県桜井市の大神神社の4月18日の神事「鎮花祭」は薬祭で、ササユリとスイカズラが神饌としてお供えされ、病気の鎮圧を祈願されます。
さらに奈良市最古の神社率川(いさかわ)神社には、三枝(さえぐさ=ユリの古名)祭という神事があります。
たくさんのササユリの花で飾った酒樽を神前に供え、百合の舞が献ぜられて、神をお慰めするとともに、疾病除けの祈願をする由緒深い優雅なお祭りです。
このササユリは疾病除け、ことに精神神経病に霊験があるといわれ、梅雨期の鬱陶しさを払う気剤として、神酒とおもに参詣客に授与されています。
近代科学は、この味覚の分野を、酒は百薬の長の教えにより、芳香性健胃整腸薬やスパイス(香辛料)として発展させ、嗅覚の分野である香りを皮膚や頭髪の保健のための香粧品として受け継いでいます。
ちなみに、大神神社鎮花祭の4月18日は、渡辺武先生の誕生日でした。
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