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2008年7月 4日 (金)

「食道楽」に説く玉子の善し悪し

ふじみ野市 マサキ薬局の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。

玉子のテーマつながりです。食育と食のリスクの両方に関連してきます。

村井弦斎の食道楽(明治36年)には、鶏卵のテーマが第37章「鶏卵の半熟」、第38章「玉子の善悪」、第39章「食品の注意」と続きます。

第38章 玉子の善悪

小山の細君は教えに従って深き鍋を火鉢に載せたるが玉子の箱を台所より客の前に持ち来り 「中川さん、おついでにどうぞ玉子の善悪の選定法を教えて下さい。全体玉子はどういうのが良いのでしょう」 

中川 「そうですね、玉子の良否を択ぶのは必要な事ですが日本人は平生食物問題に不注意だから玉子屋が善いのも悪いのも皆んな混ぜて売っていますし、買うほうも構わずに買います。
西洋では色々区別があって値段の高下はその大小によらずして品質の良否によるそうです。
先ず大体からいうと玉子の皮がテラテラ光って光沢のあるのは古い証拠で、少しも光沢のないちょうど胡粉を薄く塗ったようなのが新しいのです。
玉子は古くなるほど胡粉のようなものが取除れて段々光ってきますから光ったものを買ってはなりません。
それから皮の薄紅いのと白いのがありますね、薄紅いのは肉用鶏の産んだので白いのは産卵鶏の産んだのですから白い方が遥かに上等です。
西洋では白い玉子と紅い玉子とは白い方が値段も高いそうです。
よく気をつけて御覧なさい。
紅い方は大概皮が厚くって白い方が薄いものです。
皮の厚いのは滅多に産まない肉用鶏のですから石灰分が多いのです。
薄い方は沢山産むから石灰分が少ないのです。
それから同じ大きさでも重量が大層違って十二匁のものもあり十四匁のもあります。
軽いのは品質が悪いのでかつ必ず古いのですから重いのを買わなければなりません。
してみると光沢のない白い玉子で重いのが一番上等なのですけれどもモー一層上等なのは受精しない玉子です。
受精しない玉子は味も大層良いし、保存期も大層長いそうです」と説明ここに至りて聞く人に解しやすからず。

中略

主人 「なるほど妙な訳だ。受精した玉子と受精せん玉子と外部から見て解るかね」
中川 「外面からでは解らんが割ってみるとよく解る」
主人 「では割ってみよう。お徳や小皿を二、三枚持っておいで」 とむずかしき玉子の検定法が始まれり。

第三十九章 食品の注意

世人の多くは毎日鶏卵を食することを知れどもその品質の良否を択ぶ事を知らず、大小を問えども新古を問わず、新古を問えども実質を問わず、実質を問えども受精したるや否やを検定するもの寡し。これ平生食物問題に不注意なるの致す所にあらずや。
客の中川は側にありける鶏卵を執りて小皿の上に割って落とし 
「小山君、よく見給え、玉子を皿の上へ割ってみて黄身がこの通り中高に盛り上がっていて白身も二段か三段に高くなっているのは新しい証拠だ。
こういうのは川の光らない玉子に限る。川の光ったのを割ると黄身も白身もダラリとして横に広がる。それは古い証拠だ。
そこでよく見給え黄身の上に鳥の目位な円い小さな線があるだろう。
俗に黄身の眼というがこれは玉子の胎盤だ。
ソラ見えたろう、これだこれだ、奥さん、お分かりになりましたか、色が薄いからよく見ないと分かりませんよ。この眼が黄身の真中にあって眼の近所には何もありますまい。こういうのは受精しない玉子です。
中略
もう一つ割らせてください、ソラ今度こそ受精しています。
これは眼の処へ透明ったドロドロのようなものが付着いていてそれが黄身の白い紐と連結してあります。
エ、分かりませんか
。どんな玉子でもこの通りに黄身の両端から白い筋が出ていましょう。これは黄身を両方の皮へ繋いで釣っている紐でカラザというものです。
この紐で両方の皮へ釣っているから黄身がいつでも真中にいるのです。
中略
一度こうやって双方をお見比べになると今度玉子を割ったとき、これは受精している、これは受精していないという事がすぐお分かりになりましょう。
何事も注意次第です。
殊に食物を取り扱う人は注意が肝腎です」 
と実物について丁寧に説明する。

と続きます。

まさに食育の講座ですね。食材、玉子の善し悪し、新旧の見分け方の講義です。冷蔵庫のない時代ですから新鮮なものを見分ける力を身につけ、傷まぬうちに調理して食べるというのが炊事担当の女性に要求される素養だったという事なのでしょう。

つづく

漢字の問題でいつも気になっていることがあります
「かんじん」 
を弦斎は、肝心ではなく肝腎と書いています。
現在は、国語の規定で、肝心が正規で、肝腎は常用外になっているらしく、ほとんど全て肝心と表記されるようです。
これは間違いです。弦斎流が正しいのです。
「かんじんかなめ」といいますが、漢方の生理学でカナメとしている臓器は、
肝臓と腎臓であって心臓ではありません。の読み方も、シンであってジンと読む例はないはずです。
戦前の確かな文章は全て肝腎になっているはずです。
漢方医学から派生して一般に使われるようになった言葉なのですから正しい表記に直して下さいと国語審議会に申し入れしたいというのが漢方家としての気持ちです。

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