食育のルーツ村井弦斎(6)
ふじみ野市 マサキ薬局の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。
『食道楽』に出てくる五味調和さがしの続きです。
第百六章 味の変化
「人の味覚は誰でも時によって変化する。
同じ物を食べても大層美味いと思う時がありさほどに思わないときがある。
料理人が何時でも人の口に合わせようとするのは非常の難事だ。
そこには才覚や気転というものがなければならん。
たとえば僕が一日朝から遠足に出て山野を跋渉して非常に疲労して帰ったと思い給え。
その晩には平成よりも甘いものが食べたくって滅多に食べない羊羹の二片位ペロリと食べる。
それが則ち生理上の必要から起こるので、疲労を医するは糖分に限る。
ー中略ー
今の場合と反対で一日運動もせず、机に向かって勉強した日は脳を使うために胃の塩酸が少なくなって酢の物が食べたくなるけれども甘いものには閉口する。
ー中略ー
家庭料理を掌る人はそんな事まで注意して、今日は日曜日だから甘口の料理を拵えよう、今日は雨が降るから酢の物を多くしようと同じ五味調和する中でもその分量を加減しなければならん。
これも胃の悪い人が遠足すると無闇に喉が渇いて飲み物と酸い物が欲しくなるからそういう人のためには冷した珈琲とかを用意するがいい。
その外勉強して脳を使う日には身体が蛋白質を需要するから肉類を食べなければならんし、運動して手足を使う日には含水炭素を要するから澱粉質類を食べなければならん。
寒い日には濃厚なものが好し。
暑い日には淡白なものが好し。
冬と夏で食べ物が違い、 朝と晩ともその材料を撰ばねばならん。
晩食に不消化物を多食すると翌朝へ持ち越して心持ちが悪いし、香料の強いものやライスカレーのような刺激物は昼食に用いないと夜になって神経を興奮させる。
-中略ー
癇癪持ちの良人を持ったら刺撃性の物即ち胡椒や芥子や山葵唐辛子の類を沢山与えないようにしないと食物の刺撃で一層癇癪を増長させる。
そういう人には玉葱だの林檎だのと脳を鎮制させるような食物を多く用いなければならん。
これに反して無性な怠け者を良人に持たら興奮性の食物を択ぶがいい。
海辺に棲む時は酸い物を食べて塩分の刺撃を調和させなければならず、山中に棲む時は塩気の物を食べて身体を養わねばならず、十や十五の発達盛りと五十六十の老人とが同じ食物を摂取しては生理上の原則に負くからね」
とかくの如く論じ来たりなば家庭料理ほどむずかしき者はなし。
陰陽五行論で、味と対応する身体の臓腑、機能との関係から理屈を展開しています。
考えてみると思い当たる事、納得する事があるのではありませんか。
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