食育のルーツ村井弦斎(4)
ふじみ野市 マサキ薬局の 漢方なブログです。健康情報を主体に書いて行きます。
『食道楽』の中で村井弦斎が五味調和について、どう触れているかをさがします。
ありました。春の巻 第三十四章 五味。 タイトルになっています。
食物を喫するを知りて食物を味わう事を知らざれば共に料理の事を談ずるに足らず。
食物を味わう事を知りて料理の法を知らざれば共に生理の事を談ずるに足らず。
人のこの世に生存するは毎日の食物を摂するがためなり。
食物は生存の大本なるに世人の深く注意せざるは怪しむべし。
この家の主人中川は平生食物論を研究すると見えて頻りに長広舌を揮い
「小山君、モー一つ僕の言うことを聞いてくれ給え、西洋料理にも今のような生理の原則はあるが素人に解り難い。
支那料理の原則たる五味の調和という事は誰にでも応用が出来て自然と化学的作用に適合しているね。
即ち料理には必ず甘いと鹹(しおからい)との外に辛いと酸いと苦いという五の味が備わらねばならん。
日本人の食物は多く二味か三味で成立っているが僕の家では注意して必ず五味を調和する。
今差し上げた料理の中に甘いと鹹いのは勿論、胡椒や芥子の辛いのがあり、梅干や蜜柑の酸いのがあり、百合や蜜柑の皮の苦いのがあって、五味になる。
梅干を使わない時は酢の物を拵えるとか百合のない時には款冬のとうとか鮎のウルカとか必ず苦味と酸味を膳の上に欠かないのが五味の調和だ。
普通の人の食物は単調単味に過ぎるようだが五つの味が互いに化学作用をすると消化も好し心持も好い。
これはどうか世人に勧めたいと思うね」客「なるほど、それも至極よかろう。・・・」
(以下略)
○支那にては五味を配合する中にも春は酸味を主として夏
は苦味を交え、秋は辛味を加え、冬は鹹味を多くす。
甘味は四時通用なり。これも自ずから学理に適いたる養
生法というべし。
春は逆上の気ある故に酸味を以て引き下げるなり。夏は
胃の働き弱る故苦味を用い、秋は気の欝ぐ時故辛味に
て刺撃し、冬は体温を保つために塩 分を要す。
陰陽五行の理論では、
肝・心・脾・肺・腎の五臓と春夏秋冬土用の季節はそれぞれ、
肝=春 心=夏 脾=土用 肺=秋 腎=冬 に配当されています。
弦斎が(注)で補足しているのは、それぞれの季節は対応する臓器に負担がかかるという原理に基づいています。
五味調和の意味の詳細については、
こちらの図 と、
こちらの説明 http://masaki-ph.com/eating.html を、ご覧下さい。
五味調和は、「何を食べるのが良いのか」だけではなくて、「どう食べるのが良いのか」という設問に対する解答です。これが現在の食育、食養生論で一番かけていることです。
弦斎はこの点でも当を得ていて素晴らしい。
つづく
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